童話説法
木仏(きぼとけ)長者

和尚さんのさわやか説法 平成16年7月号 曹洞宗布教師
常現寺住職 高山元延

 このたび、八月一日我が寺、小中野町「常現寺」を会場にして、第一回「小中野生(い)き活(い)き森のおとぎ会」が開催されることになった。
 長者山での「森のおとぎ会」は全国的にも有名であり、長い歴史と伝統がある。
 昨年は発足八十周年の記念すべき年であり多くの童話人や童話を愛する方々、子供達があの長者山の「おとぎの木」の下に参集した。
―そして―
今年は81年目である。そこで「八戸童話会」の御理解と御協力を得て「小中野」の地においても開催されることになった。
 長者山に咲く「おとぎの木」の花と種が、小中野まで飛んできてくれた。
 これから、その種から若芽が育ち、根を張り大樹となるのか、はたまた枯らしてしまうのか。
 小中野の土壌に合うか合わないか、水をやり肥料を与えるのは、私達、小中野に住む人々である。
 長者山のおとぎ会が百周年を迎える時、もし小中野のおとぎ会がそれまで続いているとすれば、20才
(はたち)の年である。どうなっていくか楽しみでもある。
 その時まで、私は生きているだろうか。どうであろうか。それも楽しみである。
―てなことで―
 最初が肝腎ということで、第一回目は正部家種康会長はじめ語り部
(かたりべ)の先生方が喜んでお話をして下さるというのだ。ついでに、この私にも話せという。
「はい。」と力強く返事はしたものの困ってしまった。
 普段は、説教説法はしているものの、童話を話すとなると思案せざるをえないのである。
 ある時、本堂で御経を読んでいた時、「ハッ」とひらめくものがあった。
「そうだ!!童話と説教をドッキングしてしまえ」
「童話という物語を通して、仏教的なこと、また人としての道をわかりやすく子ども達に説法してみればいいじゃないか」そう思ったのである。
 題して「童話説法」
―てなことで―
 今回は、その試みを「月刊ふぁみりぃ」紙上で発表することにしたい。
 さて、どうなることやら、皆さん子供にかえって、聞いて下しゃんせ。読んで下しゃんせ。


 むかーしむかし ある村に一人の長者様がおったそうな。
 この長者様は、それはそれは大層、立派な「金
(きん)の仏さま」を持っていました。
 今日もピカピカに磨いては、皆なに自慢します。
「どうじゃ、素晴らしい仏様じゃろ。天下広しといえども、こんな立派な仏様を持っているのはワシぐらいなものじゃ」
 村の衆は、「ウンウン」と頷きます。
 この長者様の家にはお風呂をたくのが仕事の若者がおったそうな。
 ある日、風呂をたく、たき木を拾いに山に行ったところ、仏様によく似た「木のぼっくい」を見つけたのです。
「いやー、こりゃ仏様じゃ」 「木のぼっくい仏様じゃ」
毎日、熱心に拝みました。若者は、この仏様が自分を守ってくれてるような気がしたからです。
 ある時、この若者をこころよく思っていない村人が、長者様にお世辞を使ってこう言ったのです。
「長者様、いつ見てもすばらしい仏様でございますなぁ〜」
「あの風呂たきどんの木仏とは、わけがちがう」
「そうだ、長者様!!」 「金の仏様と木仏で相撲をとらせてみたらどうでしょう」
「どうせ、木仏なんぞはすぐ投げ飛ばされるでしょうがね」
「そりゃ、おもしろい。わっはっは」長者様は御満悦、村人は「しめしめ」とニヤリ顔。
 早速、長者様はフロたきの若者を呼んで、
「おい、お前は毎日、木のぼっくいを拝んでいるそうじゃな」
「それでな、ワシの仏さまとお前の木仏やらで、相撲を取らせてみようと思うんじゃ」
 そして長者様は、面白がって、ついこんなことを言ってしまったのです。
「もしもじゃ、お前んとこの木仏が、ワシんとこの金仏
(きんぼとけ)様に勝ったら、ワシの家屋敷ぜ〜んぶお前さんにゆずってワシがフロたきになろうじゃないか」
「ただ、お前が負けたら、ただのぼっくいなんだから、フロのたき木にして燃やしてしまえ!!」

 若者は困ってしまいました。「こりゃ、大変なことになっただ」
「俺の仏様は、やせた木のぼっくい仏様じゃ。それに比べ御主人様の仏様は金の太った仏様じゃ」 「相撲とれば、負けて燃やされてしまう。」
「でも、俺には大事な大事な仏様じゃ」 「こまったなぁー」
 しょんぼりしながら木仏様に手を合わせるとなっなんと、木仏様が口をきいたのです。
「やってみようじゃないか。心配するなよ、大丈夫だからさ」
 若者はひっくり返って「ひゃー、仏様が口をきいただー」
 若者は木仏様の言うことを信じて、飛ぶかのように長者様のところへもどりました。
「はっけよい。のこったのこった。」
長者様も、村人達も応援をします。
「金の仏様がんばれ、がんばれ」
村人達は金仏様が勝つと御褒美がもらえます。
「ぼっくい仏様、がんばれぇー」若者は、心の中で一生懸命叫びました。
 土俵では金仏様が優勢です。堂々とした体格で寄り切ろうとしています。
「あっあぶない!!」若者は思わず目をつむりました。
「やっぱり金の仏様は強い」どよめきが起きました。
―ところが―
少しずつ形勢が逆転してきました。なんと、金仏様が土俵際まで追いつめられてきたのです。皆なは手に汗を握って応援しました。
「あっあっああ〜」
長者様の声が響いて、どっと倒れてしまったのです。
そう金仏様が負けてしまったのです。
「うわ〜い、やったぁやったぁー」
 こうして、若者は約束通り長者となり、長者様はフロたきになったのでした。
 ある日、フロを焚きながら、元長者様は金の仏様に尋ねたのです。
「なんで、あの時、木のぼっくいなんかに負けたんですか?」
すると、「それはな、お前さんは、ワシをピカピカに磨くだけで、すこしも信心をしなかった」 「だからな、最後の力
(ちから)が出なんじゃ」
「そうかあー」フロたき長者様は心から金仏様にあやまりました。
 あの若者長者
(わかものちょうじゃ)は、いつまでも信心を忘れず木仏様を拝み続けました。
 いつしか、その若者は「木仏長者」と呼ばれて、村人から親われ幸せになったとさ。
 どっとはらい。

合掌 

八月一日早朝六時
子どもから大人老人まで、どなたでもどうぞおいで下さい。

※参照
  日本昔ばなし101 講談社発行

  

 

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